1.放射線は分からないから怖い!
原発事故の放射能の影響を受けやすい幼児を抱えるお母さん方はいずれも不安に駆られて気の休まる日もない毎日を送っていることでしょう。
我が家の孫の家も同様です。 0歳と5歳の孫を抱えた二男の嫁さんも、事故後の放射能汚染でパニック状態に陥っていることが時折覗く彼女のブログでよく分かります。
大津波に襲われて原発が破損したニュースが流れ、大破した原発から水蒸気が噴き上がる様をTVで見た多くの人々が放射能汚染の広がりがどうなるのか気が気でなかったにも関わらず、誰もが納得できないような楽観的コメントを流すだけで詳しい情報を一切公表せず、国民をつんぼ桟敷に置いていたのだからパニックが起こっても仕方がないことです。
放射線は目に見えないし、何処にどのくらい飛んできてどんな影響がでるのかも分からないのだから人々が疑心暗鬼になるのは当たり前だと当局者が気づかないのが情けなく思われます。 批判やパニックを恐れて隠すのは全くの逆効果だと知るべきでしょう。
お盆休みで孫たちを連れて里帰りの嫁さんが開口一番、「心配でたまらなくて放射線量計を買いました」と取り出して見せてくれました。 「今住んでいる家は0.1µSV位だけど、ここは0.04µSVと低いですね!」・・と安堵した表情。 それがどれ程の意味を持っているのか分かって言っているとも思えないのがなんともむなしいだけでなく悲しくさえありました。
2. 一体放射線ってどんなもの?
放射線を怖がって手をこまねいていても仕方がないので「ともかく敵を少しでも知らぬことには話にならない!」・・・と、ネットの情報を色々当たってみた結果、おおよそのことが分かってきました。
* 一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度は1ミリシーベルト
だが、それがミリでなくただのシーベルトになると下のように恐ろしいことになります。
* 1時間に7シーベルトを浴びると99%の人は死亡
* 1時間に4シーベルトを浴びると50%の人は死亡
* 1時間に2シーベルトを浴びると出血、脱毛、5%の人は死亡
* 1時間に1シーベルトを浴びると急性放射線障害、吐き気、嘔吐、水晶体混濁
* 1時間に500ミリシーベルト(0.5シーベルト)を浴びるとリンパ球が減少
ただし、1時間に200ミリシーベルト以下の被ばくでは急性の臨床的病状は認められない
ということになっているようですが、低い放射線の長期的な影響については未だ議論のあるところらしいです。
こう見てみると、放射線障害は火傷によく似ているように思われます。 火傷もその受けた範囲や深さによって細胞の破壊される程度が変わり、表皮が上手く再生できる軽傷から跡がケロイドになったり死に至る重傷までさまざまなグレードがあるからです。
放射線にはX線やγ線のように物を透過しやすい電磁波と、比較的物を透過しにくい粒子線のα線やβ線など、お馴染みの紫外線や赤外線と同じような性質のものがあります。
紫外線での日焼けは放射線による細胞破壊という火傷の一種ですし、比較的温度が低くても遠赤外線を出す発熱体を長時間当てていると低温火傷を起こして細胞破壊に至ることもあるのと同様に、低い放射線でも長時間浴びていると何らかの障害を細胞に与えても不思議はありません。 だが、どれくらいの量をどれくらい長く浴びるとどう影響があるのかとうデータが未だ十分でない為に、原爆被害者認定の裁判の場でもしばしば論争の種になることがあるようです。
それはともかく、γ線などの怖さは火傷と違って内部まで貫通することのようです。 逆にこれを有効利用したのが体内の癌細胞を放射線で焼き殺す新たな治療法ですが、間違って的を外したり意図せずに体内に入ってくる放射線が良い細胞や遺伝子を破壊したりしてしまうとしたらこれほど怖いことは無いのです。 遺伝子が壊されて癌になりやすい体質になるのは御免こうむりたいことですから。
3. 日々報告される放射線量は安心か?
現在各地で毎日発表されている時間当たりの放射線量は、低い所で0.04から0.05、高い所では0.1マイクロシーベルトを超える所もあるのですが、果たしてこの値が問題あるのか無いのか、住んでいる場所や周囲の値はどうなのか・・・と多くの人が心配しているに違いありません。
この放射線、事故発生当初は水道水に溶け込んだ放射性ヨウ素を問題にしていましたが、最近は地上に積もった半減期が30年以上のセシウムが主なものになっていて、長期間被ばくする影響が心配なのです。 これは農水産品にも影響しているので内部被ばく要因としても大きな心配の種になっているのです。
だが意外なことに身の回りには普段からいろんな放射線が溢れていて、人は知らないうちに年平均2.4ミリシーベルト位の放射線に被ばくしているのだというのです。 宇宙からは宇宙線が飛んできているし、地中からはラドンという放射性元素の気体が結構多量に発生して辺りに漂っているらしいのです。 それのみならず普通の食べ物からも放射線は出ているというのだから驚きです。
他にも、同居人の吸った煙草の煙から年間1.2ミリシーベルトの放射線を受けるというし、海外旅行をすれば往復の飛行機で0.2ミリシーベルトの放射線を浴び、町の集団検診の胸部レントゲンでは0.1~0.3ミリシーベルト、胃のX線検査では4ミリシーベルト、病院ではX線CTだと7~20ミリシーベルト、CTスキャンで6.9ミリシーベルトと結構大量の放射線を浴びているそうです。
一般人の人工的放射線の年間被ばく限度が1ミリシーベルトと定められているとは言っても、これでは簡単に限度をオーバーしてしまうのではないかと思います。 オーバーすれば将来的にどんな影響が出てくるのか今の段階では誰にも分からないことですが、逆に言うと、それ故ほとんど影響が出ない極めて安全な値を基準にしたのであって、あまり厳密な根拠があって突き詰めて決められたものでは無い可能性が高いのでは・・・と思わずにはいられません。
そうは言っても、とりあえず今発表されている放射線量を長期間被ばくしたらどれ位の値になるのか時間の経過と被ばく量を計算してグラフにして眺められるようにしてみたのがこれです。(クリックすると拡大表示)
これを見ると、日々の値が毎時0.114マイクロシーベルト以下であれば問題がない限度と指定された1ミリシーベルト以下の被ばく量に収まることが分かるのですが、先に述べたように日常的に意図せずに受けている様々な放射線被ばくのことを考え合わせると、日々報道されるグラフ上のイエローゾーンの値が、基準の0.114マイクロシーベルトを多少オーバーしているからと言ってあまり神経質になる必要も無いように思います。
それよりなにより、日々報道される何処で測ったか分からぬ値よりも、地域の放射線量をきめ細かく測定して速やかに公表し、自宅周囲や公共施設等の放射線量やホットスポットの有無を心配している住民全員が共有して安心できるようにすることこそが急がれるべきことだと思います。
(注)グラフ下端に記入してある「定住可能限界放射線量?」はこの位なら日常的に受けている範囲では・・と単なる目安のつもりで書き入れました。 「滞在時間限定領域」に関しても単なる推定領域ですが時間までは判断出来ませんでしたのでご了承ください。