懐かしかった! 四十数年前のスキー仲間が大勢集まった。 もう名前も顔も思い出せないのだが、当時の話を聞いてる内にいろんなことが思い出され、楽しかった青春時代が懐かしく蘇ってきた。 飲みながら時の経つのも忘れて話していたらいつの間にか日付が変わっていた。 さすがに疲れて床に就いたがこんどは雷鳴や猛獣のようないびきが響き渡ってなかなか眠ることが出来ないのだ。
うとうとしている内に窓が明るくなってきた。 時計を見ると6時半。
外は快晴だった。 懐かしい雪山を見たくなって急いで身支度して零下十数度の外に出た。 飲みすぎと寝不足で足元がおぼつかない。
部落の外れまで行ってみると、八方尾根の向こうに杓子岳と白馬岳が朝日に染まっていた。 四十数年前と変わらぬ神々しい山の姿に寒さを忘れるようであった。
今日は折角の天気だから昔滑った飯森スキー場を見て、ついでに遠見尾根の天辺まで行ってみようということになった。
昔スキーを担いで歩いた山径は面影も無いくらい立派になり、スキー場も想像を絶する広大なゲレンデに変身、何もかもすっかり変わってしまってまるで浦島太郎の心境であった。
スキーやスノーボードを楽しむ若者を半ば呆然と眺めた後、ゴンドラ乗場に行くことにした。 遙か彼方にゴンドラが動いているのが見えるのだが、どうやって行けば良いのか分からない。 そこでスキーリフトの切符売り場に行って「ゴンドラの乗り場へはどうやって行くの?」と聞いたら「初心者ですか?」と聞き返された。 「いや-、僕等は歩行者なんだけど・・」と言うと、「スキー穿いてないんですか! それではあそこのリフトに乗って・・・」と指差しながら丁寧に教えてくれた。
遠見尾根のゴンドラの終点は五竜岳が眼前に迫る「地蔵の頭」にあった。 これは凄い!思わず歓声を上げる景観だった。
この「地蔵の頭」からの360度の眺めは素晴らしかった。 昔夏山で麓から重い荷を背負ってここに到達した時の苦しかったことを思い出していた。 それがものの10分程でここまで来れるようになったんだからほんとに夢のような気分である。
ふと遠くに目をやると、遙か彼方にあのどっしりとした山容の雨飾山が見えていた。 この山の姿は何時見ても素晴らしい。 その右隣にくっきりと焼山が見え、その右隣には一段と真っ白に雪を被った優雅な姿の火打山が見えていた。